このページの要点
- 事業譲渡は財産・契約・債務を個別に移す取引で、移るのは契約書に特定したものに限られる。本文は別紙に掲げるものに限る形にし、本文と別紙が食い違うときの優先関係も書く。
- 目録は、移す資産・移す契約・引き受ける債務・除外する資産・除外する債務の五つに分ける。リース品は物としてではなく、契約上の地位の移転(民法539条の2)で扱う。
- 債務は、買主が払うと決めても債権者との関係は変わらない。併存的債務引受(民法470条)か免責的債務引受(民法472条)かを決め、債権者の関与の手当てを書く。
- ドメイン・SNS・予約サイトの名義は提供者の規約で移せるかが決まる。移せなかった場合の代金の調整と、譲渡後に見つかったものを引き渡す手順も書く。
結論:「一切を譲渡」と書かずに、移すもの・移さないものを別紙の目録で一つずつ決める
事業譲渡では、譲渡の対象が会社そのものではなく、事業を構成する個々の財産・契約・債務の集まりです。そのため「何を譲るか」を契約書で特定しないと、引き渡しの日になって「その機械は含まれるのか」「前月までの売掛金はどちらのものか」「未払いの仕入代金は誰が払うのか」という食い違いが一度に出てきます。株式譲渡のように会社ごと移る形とは違い、事業譲渡は契約書に書いたものだけが移るのが基本です。このページでは、その特定の仕方に絞って説明します。
結論を先に書くと、次の三つが要点です。
- 包括規定に頼らない:「本事業に関する一切の資産」「その他これに付随するもの」のような言い方だけで済ませず、別紙に目録を付ける。
- 移さないものも書く:現金・預金、売掛金、リース品、売主個人の物など、除外するものを列挙する。除外の記載がない契約は、読み手によって範囲が変わる。
- 債務は「誰が負うか」を債権者との関係まで決める:売主と買主の間で引き受けると決めても、取引先(債権者)に対しては、民法の債務引受の定めに沿った手続が別に要る。
事業譲渡と株式譲渡の全体の違いは事業譲渡と株式譲渡の違いで、会社法上の手続は会社法の事業譲渡の手続で扱います。ここでは、契約書の「譲渡物」の条項と別紙の作り方に話を限ります。以下、事業譲渡の中身の捉え方、本文と別紙の食い違い、資産ごとの移し方、債権と債務の扱い、アカウントやドメインなど名義のあるもの、除外した資産の扱いの順に述べます。
事業譲渡は「財産・契約・債務の束」を一つずつ移す取引
会社法の上で「事業譲渡」といえば、一般に、一定の事業目的のために組織化され、有機的に一体として機能している財産を譲渡することと説明されます。設備、商品、取引関係、ノウハウ、従業員の配置といったものが一体となって事業として動いている、その全部または一部を移す取引です。ただし、契約の中身としては、個々の財産の売買、契約上の地位の移転、債務の引受けが束になったものです。合併や会社分割のように、法律の定めで権利義務が一括して移る(包括承継)わけではありません。移るかどうかは、対象ごとに個別に判断されます(特定承継)。
この違いは、契約書の書き方に直結します。包括承継であれば、「承継する権利義務」を分割計画などで特定し、法律の効果で移ります。事業譲渡は、売買の規定が準用されること(民法559条)を前提に、当事者の合意と、相手方の承諾や名義変更などの個別の手続で移していきます。契約書は、その個別の移し方の一覧表の役割を持ちます。
この項目で出てくる主な条文
民法176条
物権の設定・移転は、当事者の意思表示だけで効力を生じる。
契約書では動産・設備の所有権は、契約で移転の時期を決めれば、その時期に移る。引渡しの日と所有権の移転日を同じにするのか、代金の完済時にするのかを書く。
民法178条
動産に関する物権の譲渡は、引渡しがなければ第三者に対抗できない。
契約書では譲渡日に現物を引き渡し、受領を書面で残すと、後から二重に譲渡されたり、売主の債権者が差し押さえたりした場合の争いを減らせる。
民法559条
売買の規定は、売買以外の有償契約に準用される。
契約書では事業譲渡は有償契約として、売買の規定(契約不適合の責任など)が準用される場面がある。ただし事業の性質上なじまない規定は、契約で別に定めることが多い。
民法467条
債権の譲渡は、債務者への通知または債務者の承諾がなければ、債務者その他の第三者に対抗できない。
契約書では売掛金を譲渡するなら、取引先への通知の方法と日付(確定日付のある証書)まで段取りに入れる。
民法539条の2
契約上の地位の譲渡は、相手方が承諾したときに移転する。
契約書では取引先との継続契約を移すなら、相手方の承諾を得る時期と、承諾が得られなかった場合の扱いを契約書に書く。
条文は e-Gov法令検索の現行の規定で確認しています。債務引受の条文は後の節で扱います。
なお、小さな店舗や個人で営む事業の場合は、会社法の事業譲渡の規定が直接は使えないことがあります。その場合の組み立ては個人事業・店舗の譲渡契約書で扱っています。以下の目録の考え方は、会社でも個人でも共通です。
本文の包括規定と別紙の目録が食い違うと、どちらが優先するのかが争いになる
譲渡物の条項でよく見かけるのは、本文に「店舗の内装、備品、屋号、売上、その他これらに関する一切のもの」のように、いくつかの項目を並べたうえ、最後に包括的な文言を置く書き方です。小さな取引ではこれで足りるように見えますが、実際には、項目のどれもが「何を指すのか」を決めていません。「備品」にはリース契約で借りている機械が入るのか。「売上」は、これまでの売上の売掛金なのか、譲渡後の売上なのか。「その他一切」は、書かれていない債務まで含むのか。
特に問題が大きくなるのは、本文では「一切」と書き、別紙の目録には一部しか載せていない場合です。目録に載っていないものは移らないのか、本文の「一切」の中に入るのかが読み方によって分かれ、「別紙の記載が優先する」という優先関係の条項がなければ、解釈が割れます。次のように整理すると、読み違いを減らせます。
書き方の例(一般的な例) 譲渡物の書き方
対象の特定
理由「一切」は範囲が読み手で変わる。限定列挙にし、列挙外は対象外と先に宣言しておく。
本文と別紙の関係
理由どちらかを決めておけば、矛盾が見つかったときの争いが一段階で済む。
「売上」を譲渡物にする
理由「売上」は、金額なのか債権なのか、将来の収益なのかが曖昧。時期で分けて書く。
範囲外の取扱い
理由見つかったあとの手順を決めると、取引の完了後の混乱を避けられる。
目録は、数が多い事業では表計算の形になります。小さな事業でも、少なくとも次の五つの区分を分けておくと、後からの読み違いを防げます。
譲渡契約の目録の区分(例)
| 区分 | 何を載せるか | 決めること |
|---|---|---|
| 移す資産 | 設備、什器、内装、在庫、保管中の物、商標・屋号、ウェブサイトなど | 現物の所在、数量、評価の基準日、引渡しの方法、所有権の移転時期 |
| 移す契約 | 仕入先・取引先との継続契約、賃貸借、保守契約、リース契約など | 相手方の承諾が要るもの、承諾を得る担当と期限、得られなかった場合の扱い |
| 引き受ける債務 | 買主が支払う約束をする債務(未払の仕入代金、前受金の返還義務など) | 併存的に引き受けるか、免責的に引き受けるか、債権者の承諾の有無、上限 |
| 除外する資産 | 現金・預金、売掛金、売主個人の物、リース品、第三者から預かっている物 | 除外の理由、譲渡日までの管理、譲渡日以後に回収した場合の扱い |
| 除外する債務 | 売主に残す借入、税金・公租公課、個人的な債務、係争中の債務 | 売主が責任を持つことの明記、買主に請求が来たときの対応と求償 |
資産ごとに「移す方法」が違う:設備・在庫・リース品・権利
資産は、種類ごとに移し方が違います。契約書で一括して「譲渡する」と書くだけでは、現実の移転手続が追いつかないものがあります。
設備・什器・内装は動産または不動産の付属物で、引渡しをもって移すのが通常です(民法178条)。ただし、賃貸物件の内装の一部は、退去時に賃貸人の所有になる扱いが賃貸借契約にあるかもしれません。内装を「譲渡物」と書いても、賃貸借契約でどうなっているかによっては、実質的に使用する権利にとどまります。賃貸借の部分は契約・賃貸借・許認可・個人データの引継ぎで整理しています。
在庫は、数量と評価が毎日動くので、「譲渡日の在庫を譲渡する」と書くだけでは、いつの時点の数量か、何をもって棚卸とするかが決まりません。基準日を決めて立会いで数え、売れ残りや傷みのあるものを対象から外す、といった定めが必要です。在庫の評価と価格の調整は譲渡対価と価格の調整に委ねます。
リース品・割賦で買ったものは、所有者がリース会社などで、売主が持っていても売主の財産ではありません。譲渡物の目録に載せてしまうと、売主が持っていない権利を売ることになります。買主が引き続き使いたい場合には、物を売るのではなく、リース契約の契約上の地位の移転(民法539条の2)として扱い、リース会社の承諾を得る必要があります。承諾が得られなければ、買主が自分で新しく契約するか、その機械を使わない前提で運営を考えるかを決めておきます。
屋号・商標・図案・写真・マニュアルは、無形の財産です。屋号は、その名前の使用を譲渡人がやめ、譲受人が使えるようにする、という形で書くのが一般的です。商標を登録していれば移転の手続が別にあります。画像やマニュアルについては、売主がそもそも権利を持っているのか(外部の制作者に作らせたものはどうか)を確認し、権利を持っていないものを「譲渡する」と書かないようにします。確認できないときは、「売主が保有する範囲で、使用を許諾する」という書き方もあります。
目録に載せるときの区別
移すと書けるもの
- 売主が所有し、第三者の権利が付いていない設備・在庫
- 売主が自ら作成し、権利を持つ資料・図案
- 売主名義で登録している屋号・商標(移転手続を伴う)
- 相手方の承諾が得られた契約上の地位
移すと書いてはいけないもの
- リース会社などが所有する物
- 賃貸人から借りている物(賃貸物件そのもの)
- 承諾が得られていない契約
- 外部の制作者に権利が残っている制作物
「書いてはいけない」は、書くと売主が持っていないものを売る契約になってしまうという意味です。承諾待ちのものは、条件付きの項目として別に書きます。
債権と債務の扱い:売掛金は誰のものか、未払金は誰が払うのか
事業を譲渡すると、売主に残るものと買主に移るものが入り交じります。もっとも争いになりやすいのは、譲渡日より前に発生した債権・債務の扱いです。
債権(売掛金・貸付金・預け金)は、譲渡しないで売主に残すか、譲渡して買主が回収するかを決めます。譲渡するなら、民法466条により債権は原則として譲渡できますが、取引先との契約に譲渡を禁止または制限する旨の特約(譲渡制限の意思表示)があるときは、その特約を知っている、または重大な過失で知らなかった譲受人に対して、債務者は履行を拒めます(同条3項)。さらに、債務者や第三者に対して譲渡を主張するには通知または承諾が要り、債務者以外の第三者に対抗するには確定日付のある証書が要ります(民法467条)。つまり、売掛金を譲渡するなら、取引先への通知の準備まで契約に織り込む必要があります。
債務は、買主が引き受けるのか、売主に残すのかを決めます。ここで押さえておきたいのは、売主と買主が「買主が払う」と決めても、それは二人の間の約束にとどまり、債権者(取引先)に対しては何も変わらないことがある、という点です。債権者との関係で債務の負担者を変えるには、民法が定める債務引受の形をとります。
債務引受の二つの形(民法470条〜472条の4)
| 項目 | 併存的債務引受 | 免責的債務引受 |
|---|---|---|
| 効果 | 引受人が、元の債務者と連帯して同じ内容の債務を負う(470条1項) | 引受人が同じ内容の債務を負い、元の債務者は債務を免れる(472条1項) |
| 債権者との契約 | 債権者と引受人の契約でできる(470条2項) | 債権者と引受人の契約でできる。債権者が債務者へ契約をした旨を通知した時に効力を生じる(472条2項) |
| 債務者と引受人の契約 | できる。債権者が引受人に承諾をした時に効力を生じる(470条3項) | できる。債権者が引受人に承諾をすることが必要(472条3項) |
| 売主にとって | 売主の責任は残る。債権者は売主にも買主にも請求できる | 売主は免れる。債権者の関与の手当てが必須 |
| 引受人の求償・担保 | (連帯して債務を負う関係による) | 引受人は債務者に求償できない(472条の3)。担保は一定の要件で引受人の債務に移せる(472条の4) |
実務では、売主は事業を手放した以上、債務からも抜けたいと考えますし、買主は、帳簿に載っていない債務まで引き受けることを避けたいと考えます。そこで、契約書には、次のような仕分けを入れます。
債務の仕分けで決めておくこと
- 買主が引き受ける債務を、別紙に金額と相手方を特定して列挙する(列挙外の債務は引き受けない)。
- 引き受ける債務について、債権者の承諾を得るのは誰か、いつまでか、承諾が得られなかった場合は買主がいったん支払い売主へ求償するのか、などの精算の方法を決める。
- 別紙に載っていない債務が後から判明した場合は売主が責任を負い、買主が支払ったときは売主に求償できると書く。
- 店舗の前受金・預り金・未使用のポイントや回数券のような「顧客に対する将来の提供義務」は、債務として引き受けるのか、売主が返金して終えるのかを決める。
- 会社が事業を譲り受けて売主の商号を続けて使う場合は、会社法22条により、譲受会社も売主の事業で生じた債務を弁済する責任を負うことがある。契約で免責の合意をしても債権者には及ばないので、手続の面は会社法の事業譲渡の手続で確認する。
名義のあるもの:ドメイン、SNS、予約サイトのアカウント、電話番号
現在の小さな事業では、ウェブサイトのドメイン、SNSのアカウント、予約サイトやモールの店舗ページ、地図上の店舗情報、電話番号、メールアドレスなどが、売上の入口になっていることが多くあります。これらは「物」ではなく、サービス提供者との契約の上の地位です。したがって、売主が譲渡したくても、サービスの利用規約が譲渡や名義変更を認めているかどうかで、結論が決まります。
確認の問いと理由名義のあるものを譲渡物に載せる前の確認
提供者の規約は、アカウントの譲渡・名義変更を認めているか。
認めていない場合、「譲渡する」と契約書に書いても、実際には移せない。移せないものを譲渡物として代金に含めると、後で契約不適合や債務不履行の問題になる。
移すのは、アカウントそのものか、運営の権限か、中身(投稿・画像・顧客リスト)か。
アカウントの名義変更ができない場合でも、中身を新しいアカウントに移す、運営権限だけを渡す、といった形に分けて書ける。
ログイン情報の受け渡しは、規約違反にならないか。
規約で第三者への貸与や共有が禁止されていることがある。その場合は、禁止に抵触しない方法を選ぶ。
移管の費用と期限は誰が負担するのか。
ドメインの移管費用、移管に要する日数、認証コードの発行などは、売主の協力義務として期限付きで書いておく。
移せなかった場合、代金はどうなるのか。
譲渡物のうち移せなかったものがある場合の代金の調整、代わりの対応(一定期間の運用の委託など)を、条件として書いておく。
電話番号や住所に紐づく登録情報は、個人データの引継ぎの面も持ちます。顧客情報の取扱いは契約・賃貸借・許認可・個人データの引継ぎで整理しています。
一般に、ドメインは登録事業者の定める手続で移管され、SNSは一定の条件のもとでのみ名義変更を認めるか、そもそも認めていないことがあります。どれがどうなっているかは、サービスごとに規約が違い、変更もされるため、この解説では個別には触れません。契約書の書き方としては、「現在の規約で名義変更が可能であることを確認したうえで」「可能な範囲で」「譲渡日までに」といった限定を付け、移管の完了を代金の支払条件と結びつけるかどうかを決めます(支払条件との結びつけはクロージングの前提条件と前後の義務で扱います)。
除外した資産と、譲渡日後に残ったもの
譲渡の対象から外した資産にも、取引の完了後に手当てが必要なものがあります。
譲渡日の前後で除外資産に起きること
- 譲渡日の前除外する資産を目録で明示し、売主が持ち出す時期と場所を決める。店舗内にある売主の私物や、第三者から預かっている物の撤去の期限も入れる。
- 譲渡日除外資産と譲渡資産を現場で区別し、立会いで確認する。リース品は、継続して使うのか返却するのかを決めたうえで、リース会社への連絡を済ませる。
- 譲渡日の直後売主に残った債権が買主の口座に入金される、売主の顧客から買主へ連絡が入るなど、取り違えの入金や問い合わせが発生する。受け取った側が速やかに相手方へ引き渡す義務を書いておく。
- その後除外資産のはずが買主の手元に残っているとき、または譲渡資産のはずが売主の手元に残っているときの引渡し期限と、引渡しまでの管理責任を決める。
取り違えが起きることを前提に、「通知して引き渡す」という手順をあらかじめ書いておくと、後の争いを避けられます。
また、譲渡資産に権利の不備があった場合の責任(目的物の種類・品質・数量が契約の内容に適合しない場合など)や、表明保証の違反との関係は、補償と責任の上限・請求期間と表明保証の書き方で整理します。このページの目録が正確であるほど、それらの条項が働く場面は少なくなります。
ここまでの内容を、署名の前に目録と本文を突き合わせるときの確認項目としてまとめると、次のようになります。
譲渡物の条項の確認項目
- 本文の譲渡物の条項が「別紙に掲げるもの」に限る形になっていて、「一切」「その他付随するもの」で範囲を広げていない。
- 別紙が、資産・契約・債務・除外資産・除外債務の五つに分かれ、それぞれに数量・所在・相手方・金額が書かれている。
- 本文と別紙が食い違ったときの優先関係が書かれている。
- 「売上」「顧客」「ノウハウ」のような抽象的な言葉が、金額・債権・関係のどれを指すのか定義されている。
- リース品・賃借物・預かり物が、譲渡資産に載っていない(または、地位の移転として別に書かれている)。
- 債務を引き受ける場合に、併存的か免責的かが書かれ、債権者の関与の手当てがある。
- アカウント・ドメイン・電話番号は、提供者の規約で移せることを確認したうえで書かれ、移せない場合の扱いがある。
- 別紙に載っていないものが後から見つかったときの手順(通知、帰属の協議、求償)がある。
起きがちなこと
譲渡物の特定で起きがちな場面
- 「一切」と書いたので、売主は未払の仕入代金まで買主が負うと思っていなかったのに、買主の側は在庫と一緒に当然に引き継ぐものと考えていた。
- 売主は売掛金を回収する気でいたが、契約書に「売上」を譲渡すると書いてあったため、買主が過去の売掛金も自分のものだと主張した。
- 備品として引き渡したレジや業務用の機器が実はリース品で、リース会社が承諾せず、買主が使えなくなった。
- ドメインとSNSを譲渡物に含めたが、名義変更の手続が譲渡日までに終わらず、一時期、旧店名の情報が出続けた。
- 譲渡日の直後に、売主の旧口座へ買主あての入金が続き、どちらの資金か分からなくなった。
- 別紙の目録を作ったが、本文は古い版のままで、別紙に載っていない機械の扱いについて双方の記憶が分かれた。
これらは、特別な事情のある取引ではなく、小さな事業の譲渡でごく普通に起こり得る場面です。目録の整理と、本文との関係の明記が、費用の小さい予防策の一つになります。譲渡後に起きる問題の全体像は譲渡後のトラブルとよくある質問で整理しています。
よくあるご質問
事業譲渡契約書に「一切の資産を譲渡する」と書けば、細かい目録は要りませんか。
要ります。「一切」は範囲が読み手で変わり、除外したいものや引き受けたくない債務まで含まれると主張される原因になります。契約書に書いたものだけが移るのが事業譲渡の基本ですので、別紙に資産・契約・債務・除外資産を特定し、「別紙に掲げないものは対象外」と書いておくほうが、双方にとって安全です。
売掛金は、事業と一緒に買主へ移りますか。
自動的には移りません。譲渡するかどうかは契約で決める事項です。譲渡する場合は、取引先との契約に譲渡を制限する特約がないかを確認し(民法466条)、通知または承諾の手続を取ります(民法467条)。売主に残す場合は、譲渡日以後に買主の口座へ入金があったときの引渡しの手順を決めておきます。
買主が債務を引き受けると契約書に書けば、債権者は買主にだけ請求できますか。
いいえ。売主と買主の間の約束だけでは、債権者に対する関係は変わりません。債権者との関係で売主を免責するには、免責的債務引受(民法472条)として債権者の関与(債権者と引受人の契約、または債権者の承諾)が必要です。併存的債務引受(民法470条)なら売主も引き続き責任を負います。どちらにするかを決め、契約書に書きます。
リース中の機械を、譲渡物に入れてもよいですか。
物として売ることはできません。所有者はリース会社などだからです。買主が使い続けたいときは、リース契約の契約上の地位を買主に移す形にして、リース会社の承諾を得ます(民法539条の2)。承諾が得られない場合に備えて、代金の調整や、代わりの機械の手配を契約書に書いておきます。
SNSアカウントやドメインは、譲渡物に含められますか。
サービスごとの規約次第です。名義変更や譲渡を認めていないものは、契約書に「譲渡する」と書いても移せません。規約で移せることを確認したうえで、移管の期限・費用・協力義務を書き、移せなかった場合の代金の調整や代わりの対応を決めておきます。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、譲渡の対象、会社の形態、定款の定め、取引先との契約の内容によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や取引を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 中小企業庁 / 個人情報保護委員会 / 法務省