事業譲渡と株式譲渡の違い:選び方、契約の流れ、基本合意から引渡しまで

事業を譲る、買うといっても、何を持っていくかで、契約書に書くことも手続も変わります。事業譲渡、株式譲渡、会社分割の違いを並べ、段階ごとの書面の役割と、小さな取引でも省けない書類を整理します。

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「一切を譲渡する」と書いても、取引先との契約や許認可は自動では移りません。反対に、株式を買えば、見えない負債も一緒に引き継ぎます。

このページの要点

  • 事業譲渡は譲る物を一つずつ特定して移す取引、株式譲渡は会社の持ち主を替える取引。移るもの、移らないものが違う。
  • 取引先との契約の移転は相手方の承諾が必要(民法539条の2)。引き受ける債務も、債務引受の手続を踏まないと売主の責任は消えない。
  • 秘密保持、基本合意、調査、最終契約、引渡しと、段階ごとの書面で決めることを分け、拘束する条項としない条項を条項ごとに書く。
  • 小さな取引でも、対象の目録、承認や承諾の書類、引渡しの確認書は省けない。書面の名前と中身、定義語の揃いを最後に点検する。

結論:「何を持っていくか」で、譲渡の形は決まる

事業を譲る、あるいは買う取引には、大きく分けて二つの形があります。ひとつは事業譲渡で、売る側が営んでいる事業のうち、買う側に渡すものを一つずつ特定して移す取引です。もうひとつは株式譲渡で、会社の持ち主である株主が、その株式を買う側に売る取引です。会社そのものは同じまま、持ち主だけが入れ替わります。

どちらを選ぶかは、「買う側が何を引き継ぎたいか」と「売る側が何を残したいか」でほぼ決まります。店舗の設備と屋号と常連の顧客だけが欲しいのであれば事業譲渡、会社が結んでいる契約や持っている許可ごと丸ごと引き継ぎたいのであれば株式譲渡が候補になります。ただし、株式譲渡では会社の中に眠っている見えない負債も一緒に移り、事業譲渡では取引先との契約や許認可が自動では移りません。どちらにも、契約書で手当てをしなければならない場所があります。

このページは、このガイド全体の入口です。二つの形の違い、会社分割との位置づけ、売買が成立するまでの書面の流れ、小さな取引でも省けない書類を、契約書に書く立場から整理します。手続の詳細は、事業譲渡については会社法の事業譲渡の手続のページ、株式譲渡については株式譲渡の手続のページ、会社を作っていない個人の事業や店舗については個人事業・店舗の譲渡契約書のページで扱います。

なお、このガイドは契約書の書き方に絞っています。相手方との交渉そのものは扱いません。金額の書き方については、税込か税別かを契約書に明記する、という点だけを取り上げます。

事業譲渡・株式譲渡・会社分割を並べて比べる

事業を他人に移す方法には、事業譲渡と株式譲渡のほかに、会社分割があります。会社分割は、会社がその事業に関して持っている権利義務の全部または一部を、分割契約の定めに従って他の会社に承継させる手続です(会社法757条、759条1項)。契約で定めたものが、効力発生日にまとめて承継される点が、一つずつ移す事業譲渡との大きな違いです。小さな取引では事業譲渡か株式譲渡が選ばれることが多いため、会社分割は比較のために概要を押さえておけば足ります。

三つの方法の比較(一般的な整理)

項目事業譲渡株式譲渡会社分割(吸収分割)
取引の相手事業を譲る会社または個人と、事業を買う会社または個人株主と、株式を買う人分割する会社と、事業を承継する会社
移るもの契約で特定した資産・契約・従業員・顧客関係など株式。会社が持つ資産・契約・許認可・負債は会社に残ったまま分割契約で定めた権利義務がまとめて承継される
取引先との契約相手方の承諾が必要(契約上の地位の移転)原則として会社に残る。ただし支配権の変更に制限を置く契約もある契約の定めに従い承継される。契約に特別の定めがないか確認する
許認可移らないのが原則。承継の規定がある業種は、その手続による原則として会社が持ち続ける。株主や役員の変更に届出を求める業種もある分割の規定と各業法の定めを個別に確認する
負債引き受けると決めたものだけ移る。商号を続けて使うと責任を負う場合がある会社の負債は全部会社に残るため、買主は間接的に引き継ぐ契約の定めに従い承継される。債権者の保護手続がある
売主側の会社の手続株主総会の承認が必要な場合がある(会社法467条)譲渡制限があれば会社の承認。定款で定める分割契約の承認、債権者の保護手続など
向く場面店舗や一部門だけを切り出す、負債を引き継ぎたくない会社ごと引き継ぎたい、許可や契約を動かしたくないグループ内の再編など、手続に時間をかけられる場面

表の「向く場面」は目安にすぎません。小さな取引でも、買う側が負債を恐れて事業譲渡を望み、売る側は会社ごと手放したいので株式譲渡を望む、というように、双方の希望が食い違うことがあります。そのときは、どの形にするかを先に決めて、その形に合わせて契約書の章立てを組みます。章立てを決めずに、事業譲渡の書き方と株式譲渡の書き方を混ぜると、後で紹介する「書面の名前と中身の食い違い」が起きます。

場面ごとに考える:どちらが向くかの目安

比較表の内容を、小さな取引で出てくる場面に置き換えてみます。次の表は、あくまで検討の入口です。実際には、取引先の数、契約の内容、許認可の有無、会社の定款の内容によって、結論が変わります。

場面別に見る、形の選び方の目安

場面事業譲渡が候補になる理由株式譲渡が候補になる理由
店舗や部門だけを売りたい売る範囲を契約で切り出せる会社全体を売ることになるため、残したい部門は先に切り分ける必要がある
負債や過去の契約を引き継ぎたくない引き受ける債務や契約を選べる(ただし商号の続用などで責任を負う場合がある)会社の負債は全て会社に残るため、調査と表明保証、補償で備える
取引先との契約や許可を動かしたくない契約は相手方の承諾、許認可は承継または新規取得の手続が要る会社の名義のまま残る(契約や業種の定めで支配権の変更に制限がある場合を除く)
売主が会社を残したい、または畳みたい売主の会社に事業以外の資産や債務が残る。売却後の会社の扱いを決める会社ごと手放せる。売主の個人保証や貸付金の扱いが論点になる
従業員も引き継ぎたい従業員ごとの承諾が必要(民法625条1項)雇用主は会社のままで、契約の相手方は変わらない

売る側と買う側で、見ている点が違う

売る側が気にしやすいこと

  • 代金を確実に受け取れるか、引渡し前に支払われるか
  • 譲ったあとに、過去の取引の責任を追及されないか
  • 従業員や取引先に迷惑をかけず、引継ぎを終えられるか
  • 譲ったあとに、同じ地域で商売を続けられるか
  • 個人の保証や担保が残らないか

買う側が気にしやすいこと

  • 見えない負債や、説明されていない問題がないか
  • 取引先や賃貸人が、新しい持ち主を受け入れてくれるか
  • 必要な許認可を使い続けられるか
  • 売主が近くで同じ事業を始め、顧客を連れて行かないか
  • 問題が出たとき、代金の返還や補償を受けられるか

契約書は、これらの懸念を条項に置き換える作業です。どちらの側に立つ場合も、相手が何を心配しているかを知っておくと、条項の交渉の落としどころが見えます。

売る側と買う側の関心は、しばしば逆向きです。売主は責任を限定したく、買主は責任を広く残したい。売主は競業を自由にしたく、買主は制限したい。代金は売主が早く欲しく、買主は問題がないと確かめてから払いたい。契約書は、これらの利害を、条項の言葉で調整するものです。調整の結果が、片方に極端に偏った条項になっていると、後で争いになったときに、条項の趣旨を巡る別の争いが生まれます。そのため、どの条項も、「なぜその書き方なのか」を当事者が説明できる形にしておきます。

当然に移るもの、移らないもの

事業譲渡と株式譲渡の最大の違いは、「何も書かなくても移るもの」の範囲です。株式譲渡では、会社という入れ物はそのままなので、会社名義の契約、預金、機械、許可は、株主が替わっても会社の名義のまま残ります。事業譲渡では逆に、買主に移したいものを一つずつ契約書に書き、それぞれについて必要な手続を踏まないと、何も移りません。

事業譲渡で「移るもの」と「移らないもの」の考え方

契約書に書いて、手続を踏めば移るもの

  • 動産(機械、什器、在庫):引渡しによって移す
  • 債権:債権譲渡として移す。譲渡制限の定めがある債権に注意(民法466条)
  • 取引先との契約:相手方の承諾を得て契約上の地位を移す(民法539条の2)
  • 店舗の賃借権:賃貸人の承諾が必要(民法612条)
  • 従業員との雇用関係:本人の承諾が必要(民法625条1項)
  • 引き受ける債務:債権者との関係で、債務引受の手続を踏む(民法470条、472条)

自動では移らず、別の手当てが要るもの

  • 許可・認可・登録などの許認可:事業者ごとに与えられるのが原則
  • 売主の会社が持つ契約上の義務:買主が引き受けると書いただけでは債権者には主張できない
  • 売主に残る債務:特に指定しなければ売主に残る
  • 個人データ:引き継ぐ場合は個人情報保護法の定めに従って提供する
  • 屋号やアカウント、電話番号、ドメイン:名義の変更が別に必要な場合が多い

どれが「契約書に書けば足りるもの」で、どれが「相手方の承諾が要るもの」かを分けておくと、契約書の前提条件の条項(クロージングのページ)が書きやすくなります。

事業譲渡の場合、契約書に「甲は乙に事業の一切を譲渡する」と書いても、それだけでは取引先との契約上の地位は移りません。契約上の地位の譲渡は、譲渡の合意に加えて、契約の相手方が譲渡を承諾したときに移転します(民法539条の2)。相手方が承諾しなければ、買主は売主の契約を引き継げないのです。買う側にとっては、取引先の承諾が取れなかった場合に、代金を減らす、契約を解除する、売主が代わりに履行を続けるといった扱いを、契約書で先に決めておく必要があります。

引き受ける債務も同じです。買主が売主の債務を引き受けると契約書に書いても、債権者との関係では、債務引受の手続を踏まなければ売主の責任は消えません。債務者(売主)と引受人(買主)が合意し、債権者が引受人に承諾することで、売主が免れる免責的債務引受が成立する、というのが民法472条3項の形です。売主が債務から離れたいのか、買主と併存して責任を負うのか(併存的債務引受。民法470条)は、売主にとっても買主にとっても結果が大きく違うので、条文に即して書き分けます。詳しくは譲渡するもの・しないものの決め方のページで扱います。

株式譲渡では逆に、「移らない」と考えていたものが残ります。会社が結んでいる契約の中に、株主や経営者が変わったときに相手方へ通知する、あるいは相手方が解除できるという定めが入っていることがあります。このような「支配権の変更」に関する定めは、契約書の中でも見落とされやすい部分です。株式譲渡であっても、主要な契約を読んで、株主の変更が問題にならないかを確認する必要があります。

取引の流れ:秘密保持からクロージングまで

事業や会社の譲渡は、一通の契約書で終わる取引ではありません。小さな取引でも、検討を始めてから引渡しまでに、いくつかの書面と確認の段階があります。段階ごとに、どの書面が何を決めるのかを分けておくと、契約書の役割分担がはっきりします。

事業・会社の譲渡の一般的な流れ

  1. 目的と範囲の整理売る理由、買う理由、希望する形(事業譲渡か株式譲渡か)、譲る範囲をそれぞれ書き出す。後の契約書の章立てがここで決まる。
  2. 秘密保持の約束内部の数字や取引先を開示する前に、開示した情報の取扱いと、取引の検討をしている事実そのものを秘密とする約束を結ぶ。
  3. 基本合意価格の目安、独占して交渉する期間、調査への協力、最終契約までの予定を確認する。拘束する部分と拘束しない部分を分けて書く(基本合意書と調査のページ)。
  4. 調査(買主による確認)財務、契約、許認可、人、個人データなどを確認する。見つかった事柄を価格や条件に戻す方法を、契約書に書いておく。
  5. 最終契約の締結事業譲渡契約書または株式譲渡契約書で、対象、対価、表明保証、補償、競業避止、前提条件などを確定する。
  6. 前提条件の充足売主側の会社の承認、取引先や賃貸人の承諾、許認可の手続など、引渡しの前に済ませるべきことを済ませる(クロージングのページ)。
  7. クロージング(引渡し)代金の支払、資産の引渡し、名義変更のための書類の受渡し、契約上の地位の移転を、同じ日に行う。
  8. 引継ぎと、その後引継ぎ協力、競業の制限、補償の請求期間が続く。トラブルが起きたときの窓口もここで決まる(譲渡後のトラブルのページ)。

小さな取引では、基本合意を省いて、秘密保持から最終契約へ進むことも少なくありません。省く場合も、基本合意書が果たしていた役割(交渉の期間、費用の負担、資料の返還)を、最終契約までの別の書面か、秘密保持の約束に入れておきます。

この流れで特に押さえておきたいのは、「契約を結んだ日」と「引渡しの日」が同じとは限らない点です。売主が所属する会社の承認、賃貸人の承諾、許認可の手続は、契約の締結後にしか進められないことが多く、その間は契約が成立しているのに、事業はまだ売主のものです。この空白の期間に、売主が事業の価値を下げる行為をしないこと、買主が資金を準備すること、条件が満たされなかったときにどうなるかを、契約書に書くのがクロージング条項の役目です。

小規模な取引でも、省けない書類

取引の規模が小さいと、「契約書は簡単な一枚で足りる」と考えがちです。しかし、金額が小さくても、書かなければならない項目の数は大きな取引と変わりません。違うのは、一つひとつの項目を短く、平易に書けるという点だけです。民法は、契約の成立に書面などの方式を求めていません(民法522条2項)。口頭の合意でも契約は成立します。だからこそ、あとで「そんな約束はしていない」と言われたときに備えて、合意の内容を書面にしておく必要があります。

事業譲渡・株式譲渡で、最低限そろえる書類(一般的な例)

  • 秘密保持の約束(検討の段階で情報を出す前に結ぶ)
  • 基本合意書または、それに代わる条件確認の書面(価格の目安、交渉の期間、調査への協力、費用の負担)
  • 最終契約書(事業譲渡契約書、または株式譲渡契約書)
  • 譲渡対象の目録(別紙):資産、契約、債務、従業員、アカウントなどを、本文と食い違わないように特定する
  • 売主の会社の承認を証する書類(株主総会議事録、取締役会議事録、譲渡承認の通知など)
  • 取引先、賃貸人などの承諾書
  • 引渡しの際に交わす受領書や確認書(クロージング当日の書類)
  • 名義変更や届出のための書類(許認可、アカウント、電話番号、ドメインなど)

書類の「名前」と「中身」が食い違うことにも注意が必要です。「基本合意書」という名前なのに、中に代金額と支払日と引渡日がすべて書かれていて、実質的に最終契約になっている。逆に「事業譲渡契約書」という名前なのに、代金や対象が空欄で、実質的には交渉の入口にすぎない。このような書類では、当事者が考えている拘束力と、裁判所が文面から読み取る拘束力がずれます。名前ではなく、各条項に「この条項は拘束力を有する」「この条項は拘束力を有しない」と書いて、中身で決まるようにします。

もうひとつ、書面の中で用語が揺れることにも注意します。同じ書面の中で「本合意書」「本契約書」「本契約」が混在していたり、定義されていない語が条文の中で使われていたりすると、どの書類の何条のことを指すのかがわからなくなります。ひな形を手直しして作る書面では、特に起きがちです。書面ができたら、定義語が最初に出る場所で定義されているか、書面の名前が全体で統一されているかを、条文を頭から読み直して確かめます。

形を選ぶための確認の問い

事業譲渡にするか株式譲渡にするかは、次の問いに答えていくと整理できます。答えを紙に書き出すと、契約書に何を書くかが見えてきます。

確認の問いと理由事業譲渡か株式譲渡かを決める前の問い

  1. 譲る相手は、個人の事業か、会社か。会社の場合、株式を持っている人は誰か。

    個人の事業には会社法が使えず、株式もありません(個人事業・店舗のページで扱います)。会社の場合は、株主が複数いるか、譲渡制限があるかで、手続が変わります。

  2. 買う側は、事業の一部だけが欲しいのか、会社ごとか。

    一部だけなら事業譲渡が基本です。会社ごとでも、負債や契約を引き継ぎたくなければ、事業譲渡で必要な部分だけを選ぶ選択肢があります。

  3. 会社の名義で結んでいる契約と許認可は、動かせるか。

    動かせない(動かしたくない)なら株式譲渡、動かす手続を踏むなら事業譲渡です。許認可は、承継の規定の有無を条文と所管官庁の資料で確認します。

  4. 売主の会社は、株主総会の承認を取れるか。

    事業の全部、または重要な一部を譲る場合は、原則として株主総会の特別決議が必要です(会社法467条)。取れる見込みがなければ、形を見直すか、承認を前提条件にします。

  5. 売主に、同じ事業を続けたい気持ちはあるか。

    事業譲渡では会社法21条の競業禁止が働く(特約で別に定められる)一方、株式譲渡には同じ既定がありません。競業の扱いは契約書で決める項目です(競業避止のページ)。

  6. 代金を支払う時期と、引渡しの時期は同じか。

    分けるなら、その間の事業の管理、条件の不成就の扱い、代金の分割や調整の方法を決める必要があります。

これらの問いの答えが固まったら、表明保証、価格の調整、競業避止と引継ぎ協力、契約・許認可・個人データの引継ぎの各ページで、契約書の項目ごとの書き方を確認していきます。

中小M&Aの公表資料を、契約書づくりにどう使うか

中小企業庁は、中小規模の事業者のM&Aを円滑に進めるための指針として、「中小M&Aガイドライン」を公表しています(第3版は令和6年8月)。仲介業者や支援機関に向けた行動の指針と、事業者が取引を進めるうえでの手順や留意点が整理されており、売主と買主の双方が、取引の流れや用語を理解するための資料として使えます。

ただし、こうした公表資料は、契約書の条項そのものを定めるものではありません。契約書を作る段階では、会社法、民法、商法などの条文と、当事者の合意で決まる内容を、書面に落とし込む作業が必要です。仲介業者が提示する契約書案を受け取ったときも、案に書かれた条項が、取引の実態と合っているか、自分に不利な項目が抜けていないかを、このガイドの各ページに沿って一つずつ確認します。仲介の費用や契約の仕組みは、案件ごとに異なるため、仲介の契約書も、譲渡の契約書と同じように中身を読んで、条項の意味を確かめます。

起きがちなこと

譲渡の形と書面の選び方で起きがちなこと

  • 事業譲渡のつもりで書き始めたが、途中で「会社ごと」の話になり、章立てが事業譲渡と株式譲渡で混ざった。
  • 「一切を譲渡する」と書いたが、取引先の承諾も賃貸人の承諾も得ておらず、引渡しの日に何も移らなかった。
  • 株式を買えば会社の契約も許可も全部使えると考えていたが、契約に支配権の変更に関する定めがあり、相手方から問い合わせが来た。
  • 株式譲渡で、買主が会社の簿外の負債を知らずに引き継いだ。調査と表明保証、補償の定めがなかった。
  • 基本合意書の段階で、代金額の確定のように見える書き方になり、あとで「確定していない」「確定した」と食い違った。
  • 書面の名前(合意書、覚書、契約書)と、本文の呼び方が揃っておらず、どの書類の条項を指すのかがわからなくなった。
  • 契約日と引渡し日の間に、売主が通常の営業を超える動きをしたが、禁止する条項も、基準もなかった。
  • 売主が会社の場合に、株主総会の承認を取る前に契約を結んでしまい、承認が得られなかったときの扱いが書かれていなかった。

よくあるご質問

事業譲渡と株式譲渡では、どちらが小さな取引に向いていますか?

規模ではなく、引き継ぎたいものと引き継ぎたくないもので決まります。店舗や一部門だけを切り出し、負債を引き継ぎたくないなら事業譲渡、会社の名義の契約や許可ごと動かしたくないなら株式譲渡が候補です。事業譲渡は取引先の承諾や許認可の手続が必要で、株式譲渡は見えない負債も一緒に移る、という違いを前提に、契約書で手当てする項目を決めます。

事業譲渡をすると、取引先との契約は自動で買主に移りますか?

移りません。契約上の地位を移すには、譲渡の合意に加えて、契約の相手方が譲渡を承諾することが必要です(民法539条の2)。承諾が得られなかったときの扱い(代金の減額、解除、売主による履行の継続など)を、契約書の前提条件の条項などで決めておきます。

株式譲渡なら、許認可の手続は不要ですか?

許認可を持っているのは会社なので、株主が替わっても、許認可は原則として会社に残ります。ただし、業種によっては役員や株主の変更の届出を求めるものがあり、個別の規定を確認する必要があります。許認可ごとの扱いは、条文と所管官庁の資料で確認が必要です。

基本合意書だけで、事業を売る義務は生じますか?

名前ではなく、各条項の定めで決まります。一般には、秘密保持や独占交渉のように拘束する条項と、価格や最終契約の締結のように拘束しない条項を分けて書きます。どちらか明記されていない条項は、解釈で争われるおそれがあるため、条項ごとに拘束力の有無を書いておきます。

個人で営んでいる店でも、事業譲渡契約書は必要ですか?

必要です。民法は契約の成立に書面を要求していませんが(民法522条2項)、譲渡の対象、代金、引渡しの時期、賃貸人の承諾、売ったあとの競業の扱いは、書面に残さないと争いになりやすい項目です。会社法の手続は使いませんが、商法や民法の規定を踏まえて書きます(個人事業・店舗のページ)。

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