このページの要点
- 事業の全部または重要な一部の譲渡は、効力発生日の前日までに株主総会の特別決議が必要(会社法467条)。5分の1以下などの例外は条文で確認する。
- 反対株主には株式の買取請求があり、会社は効力発生日の20日前までに通知する必要がある(会社法469条)。期限は契約書の前提条件に入れる。
- 売主の競業は、別段の定めがなければ同一・隣接の市町村で20年間禁止、特約は30年が上限(会社法21条)。続ける場合は外す特約を書く。
- 買主が売主の商号を続けて使うと債務の弁済責任を負う(22条)。債権者を害する譲渡では買主も請求を受ける(23条の2)。登記・通知と調査の記録で備える。
結論:会社法の手続は「社内の承認」「株主」「債権者」「売主の競業」の四つに分けて読む
会社が事業を譲渡するとき、会社法が定めている手続や責任は、大きく四つの方向に分かれます。第一に、売主の会社の中での承認(株主総会の決議など)。第二に、株主の保護(反対する株主が株式を買い取らせる権利)。第三に、債権者に対する責任(商号を続けて使った場合などに、買主が売主の債務を弁済する責任を負うこと)。第四に、売ったあとの売主の競業の禁止です。それぞれが別々の条文に定められており、契約書では、どれを前提条件にし、どれを表明保証にし、どれを特約で変えるかを書き分けます。
このページでは、売主が会社(株式会社と、合同会社など持分会社)である事業譲渡を前提に、会社法の条文を順に読みます。個人で営んでいる事業は会社法の対象外なので、個人事業・店舗の譲渡契約書のページで扱います。全体の位置づけは事業譲渡と株式譲渡の違いのページ、株式を売る取引の手続は株式譲渡の手続のページにあります。
会社法は改正の多い法律のため、実際の取引の際は、取引の時点で施行されている条文を確認してください。
株主総会の承認が要る場合、要らない場合
承認が必要な譲渡(会社法467条1項)
株式会社が次の行為をするときは、その行為の効力が生じる日の前日までに、株主総会の決議によって、契約の承認を受けなければなりません(会社法467条1項)。
売主側で、株主総会の承認が必要になる主な場合(会社法467条1項)
- 事業の全部の譲渡(1号)
- 事業の重要な一部の譲渡(2号)。ただし、譲り渡す資産の帳簿価額が、会社の総資産額の5分の1(定款でこれより低い割合を定めた場合はその割合)を超えない場合は除かれる
- 子会社の株式または持分の譲渡で、一定の要件に当たるもの(2号の2)
- 他の会社の事業の全部の譲受け(3号。買主側の手続)
- 事業の全部の賃貸、経営の委任、損益の全部を共通にする契約などの締結、変更、解約(4号)
ここで注意したいのは、小さな店舗や部門を譲る場合でも、それが「事業の重要な一部」に当たるかどうかを、条文の基準で判断する必要があることです。基準は、譲り渡す資産の帳簿価額が総資産額の5分の1を超えるかどうかです。この「総資産額」は、貸借対照表の総資産の額そのものではなく、法務省令が定める方法で計算した額とされています(会社法施行規則134条)。資本金や準備金、剰余金、負債の額などを組み合わせて算定するため、決算書の数字をそのまま当てはめるのではなく、算式に従って確認します。
決議の要件は、会社法309条2項11号により、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要な特別決議です(定款でさらに厳しく定めることもできます)。株主が一人、または少数の会社であれば手続そのものは難しくありませんが、議事録を作り、契約の承認を受けたことを書面に残しておく必要があります。
承認が要らない場合(会社法468条)
467条の承認が要らない場合も、条文に定められています。ひとつは、契約の相手方が、売主の特別支配会社である場合です(468条1項)。特別支配会社とは、売主の総株主の議決権の10分の9以上(定款でこれを上回る割合を定めた場合はその割合)を、ある会社などが持っている場合の、その会社をいいます。親会社に事業を移す場合を想定した規定です。
もうひとつは、買主側の手続の簡易化です。他の会社の事業の全部を譲り受ける場合に、対価として交付する財産の帳簿価額が、買主の純資産額の5分の1以下であれば、買主側の承認は要りません(468条2項)。ただし、法務省令で定める数の株式を持つ株主が、通知または公告の日から2週間以内に反対する旨を通知したときは、買主側も決議が必要になります(468条3項)。
取締役会がある会社の別の手続と、持分会社の場合
株主総会の承認が要らない小さな譲渡でも、売主が取締役会設置会社であれば、取締役会の決議が必要になることがあります。取締役会は「重要な財産の処分及び譲受け」の決定を取締役に委任できないとされているためです(会社法362条4項1号)。事業の一部の譲渡が「重要な財産の処分」に当たるかは、個別に判断します。株主総会の承認の要否と、取締役会の承認の要否は、別の問題です。
合同会社などの持分会社には、467条のような規定が、そのままの形ではありません。467条は株式会社の規定です。持分会社の業務は、定款に別段の定めがなければ社員の過半数で決まり、業務を執行する社員を定款で定めた場合は、その社員の過半数で決まります(会社法590条2項、591条1項)。事業の全部を譲るような重大な取引では、定款の定めを確認したうえで、全社員の同意書を取っておくと、あとの争いを避けやすくなります。
条文の読み方:事業譲渡の承認に関する規定
会社法467条1項
事業の全部、重要な一部の譲渡などは、効力発生日の前日までに株主総会の決議による契約の承認が必要
契約書では契約書に「売主は効力発生日の前日までに承認を得る」旨と、承認を得た議事録の写しの交付を前提条件として書く
会社法468条1項
契約の相手方が特別支配会社の場合は承認が不要
契約書では相手方が親会社に当たらない通常の取引では、この例外は当てはまらないと確認しておく
会社法309条2項11号
467条の決議は特別決議(出席株主の議決権の3分の2以上)
契約書では定款の定めで厳しくなっていないかを、売主の定款で確認する
会社法362条4項1号
取締役会設置会社では、重要な財産の処分を取締役に委任できない
契約書では株主総会の承認が不要でも、取締役会の議事録を求めるかを決める
承認を欠いた事業譲渡の効力は、個別の事情で争いになり得ます。契約書では、承認の取得を売主の義務と前提条件にし、取得できなかったときの扱い(契約の解除、代金の返還など)を併せて定めます。
反対株主の株式買取請求と、通知の期限
事業譲渡に反対する株主には、会社に対して、自分の持っている株式を公正な価格で買い取るよう請求する権利があります(会社法469条1項)。事業の全部や重要な一部を譲る決議が成立しても、反対した株主は、株式を会社に買い取らせて会社を出ることができるのです。売主の会社にとっては、この買取りの資金をあらかじめ見込んでおく必要があります。
買取請求ができる「反対株主」は、総会の決議が必要な場合は、総会に先立って事業譲渡に反対する旨を会社に通知し、かつ総会で反対した株主(議決権を行使できる株主)と、総会で議決権を行使できない株主です(469条2項1号)。決議が不要な場合は、全ての株主が反対株主として扱われます(同項2号)。
反対株主の買取請求に関する時間の流れ(会社法469条、470条)
- 効力発生日の20日前まで売主の会社は、株主に対して事業譲渡をする旨を通知する(469条3項)。公開会社である場合や、総会の決議で承認を受けた場合は、公告で通知に代えることができる(同条4項)。
- 効力発生日の20日前から前日まで反対する株主は、買取りを請求する株式の数を明らかにして請求する(469条5項)。株券が発行されている株式は、株券を提出する(同条6項)。
- 効力発生日事業譲渡の効力が生じる。この日から、価格の協議と支払の期間が始まる。
- 効力発生日から30日以内価格について協議が調わない場合、その期間満了の日後30日以内に、株主または会社が裁判所に価格の決定を申し立てることができる(470条2項)。
- 効力発生日から60日以内協議が調ったときは、会社はこの期間内に代金を支払う(470条1項)。60日以内に申立てがなければ、株主は買取請求を撤回できる(同条3項)。
買取請求は、会社の承諾がなければ撤回できません(469条7項)。事業譲渡を中止したときは、請求の効力は失われます(同条8項)。
買取請求の権利は、すべての事業譲渡に及ぶわけではありません。事業の全部を譲渡する場合で、同じ総会で解散の決議もされたときは、買取請求は認められません(469条1項1号)。また、468条2項の簡易な買主側の手続の場合も、反対通知がない限り対象外です(同項2号)。
契約書への影響としては、次の二点が大切です。ひとつは、売主が株主への通知を効力発生日の20日前までに行うことを、契約書の前提条件か、売主の義務に入れておくことです。通知の期限を過ぎると、効力発生日を延ばさなければなりません。もうひとつは、株主が少数で、全員が賛成している会社では、買取請求の可能性が低いので、全株主の同意書を取っておくことで、リスクを減らせるという点です。反対株主の買取請求は、会社の資金繰りに直接響くため、買主は、買取請求により売主の資金が不足し、代金の一部が回収できなくなる事態に備えて、売主の保有資金や買取請求の状況を、表明保証の対象にすることがあります。
売ったあとの売主の競業禁止(会社法21条)
事業を譲渡した会社(譲渡会社)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(特別区を含み、政令指定都市では区または総合区)の区域内と、これに隣接する市町村の区域内では、事業を譲渡した日から20年間、同一の事業を行ってはなりません(会社法21条1項)。事業を買った人が、売主に同じ事業を近くで始められては、買った意味がなくなるためです。
当事者は特約で、これと異なる定めをすることができます。譲渡会社が同一の事業を行わない旨の特約をした場合は、その特約は、事業を譲渡した日から30年の期間内に限って効力を有します(21条2項)。つまり、特約で地域を広げたり、期間を20年超にしたりすることはできますが、期間は30年が上限です。さらに、これらの規定にかかわらず、譲渡会社は、不正の競争の目的をもって同一の事業を行ってはなりません(21条3項)。たとえ競業を許す特約があっても、不正の競争の目的による競業は許されません。
契約実務では、この20年という既定が、多くの場面で実情に合いません。事業の種類によっては、20年は長すぎ、隣接市町村に限った範囲は狭すぎます。売主が譲渡後も別の場所で同じ商売を続けたいのであれば、競業禁止を外す特約(別段の意思表示)を書かないと、既定の禁止がそのまま働きます。逆に、買主がしっかり守りたいのであれば、期間・地域・業務範囲を決めて、契約書に書き込みます。競業避止の条項の書き方は、競業避止と引継ぎ協力のページで扱います。
競業禁止の例文(既定にまかせる場合、売主に別の事業を認める場合、期間を定める場合)は、競業避止と引継ぎ協力のページに比較表としてまとめています。このページでは、会社法21条の既定を知ったうえで、株主総会の承認や買取請求の通知の期限と同じく、売主の競業の扱いも契約の早い段階で決めておく、という点を押さえてください。
債権者に対する責任:商号の続用と、債権者を害する譲渡
商号を続けて使うと、買主が売主の債務を負う(会社法22条、23条)
事業譲渡の買主は、引き受けた債務だけを負うのが原則です。しかし、買主が売主の商号を引き続き使用する場合には、買主も、売主の事業によって生じた債務を弁済する責任を負います(会社法22条1項)。店の名前を変えずに営業を続けると、取引先から見れば同じ会社が営業しているように見えるため、取引先を保護するための規定です。
この責任を免れる方法も、条文にあります。事業を譲り受けた後、遅滞なく、買主が本店の所在地で、売主の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合です。または、遅滞なく、買主と売主から第三者に、その旨を通知した場合は、通知を受けた第三者については責任を負いません(22条2項)。したがって、商号を引き続き使う予定があるのに、これらの手当てをしていないと、契約書で「負債は引き継がない」と書いていても、債権者に対しては主張できないことになります。
売主側の責任には期限があります。買主が22条1項で責任を負う場合、売主の責任は、事業を譲渡した日後2年以内に請求または請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅します(22条3項)。また、売主の事業によって生じた債権について、買主にした弁済は、弁済者が善意でかつ重大な過失がないときは有効です(22条4項)。
商号を続けて使わない場合でも、買主が売主の事業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、売主の債権者は、買主に弁済を請求できます(23条1項)。この場合も、売主の責任は、広告のあった日後2年以内に請求または請求の予告をしない債権者に対しては、その期間の経過で消滅します(23条2項)。
なお、条文に書かれているのは「商号」の続用です。実際の取引では、店名、サービス名、ロゴなど、商号以外の名称を続けて使うことがあります。それが22条の「商号を引き続き使用する場合」に当たるかは、名称の使い方や、取引先から見た一体性によって争われ得る点です。争いを避けるには、名称を変えるか、変えない場合は、登記または通知による手当てを講じることを前提に、契約書を書くのが安全です。契約書では、次のように、買主が商号を使うか、使うときの手当てをどうするかを書き分けます。
書き方の例商号の使用と債務の扱い
- 乙は、効力発生日以降、甲の商号(屋号を含む。)を使用しない。
- 前項にかかわらず、乙が甲の商号を引き続き使用する場合には、乙は、効力発生日の後遅滞なく、会社法第22条第2項の定めに従い、乙が甲の債務を弁済する責任を負わない旨の登記または第三者に対する通知を行う。
- 甲は、本契約で乙が引き受けないこととした債務について、甲の責任で履行し、乙に請求があった場合には、甲が乙に生じた損害を補償する。
第3項は、買主が債権者から請求を受けた場合に、売主へ求償できるようにするための定めです。補償の範囲と請求期間は、補償のページで扱います。
会社が商人(個人)に事業を譲渡する場合や、個人の営業を会社が譲り受ける場合にも、会社法24条により、商法の同趣旨の規定(商法17条から18条の2まで)や会社法の規定が、読み替えて適用されます。売主か買主のどちらかが個人の場合は、個人事業・店舗のページも併せて参照してください。
債権者を害する事業譲渡(会社法23条の2)
売主が、買主に引き継がれない債務を持つ債権者(残存債権者)を害することを知って事業を譲渡した場合、残存債権者は、買主に対して、買主が承継した財産の価額を限度に、債務の履行を請求できます(会社法23条の2第1項)。これを詐害事業譲渡といいます。事業の優良な部分だけを買主に移し、負債だけを売主に残して債権者への支払を逃れる、という使われ方を防ぐための規定です。
ただし、買主が、事業譲渡の効力が生じた時に、債権者を害することを知らなかったときは、請求は認められません(同項ただし書)。この責任は、譲渡会社が残存債権者を害することを知って事業を譲渡したことを「知った時」から2年以内に請求または請求の予告をしない残存債権者に対しては、その期間の経過で消滅します。事業の譲渡の効力が生じた日から10年を経過したときも消滅します(同条2項)。売主について破産手続開始の決定などがあったときは、残存債権者は、この請求の権利を行使できません(同条3項)。
買主の立場からは、「売主が債権者を害することを知っていたか」「自分が知らなかったか」が分かれ目です。自分が善意であったことを後で示せるように、売主の財務の状況、残る債務の見通し、支払能力についての確認を、調査の結果や表明保証として書面に残しておくことが有効です。売主の立場からは、事業を譲渡したあとも、残る債務を支払えるだけの財産が残っていることを、契約書の表明保証で確認しておくことが、買主の信頼を得るために重要です。
売主と買主、それぞれが事業譲渡の前に確かめること
売主の会社が確かめること
- 467条の承認が必要か。必要なら総会の日程と議事録
- 取締役会や社員の同意が必要か
- 反対株主への通知の期限(効力発生日の20日前)
- 譲渡後に残る債務を弁済できる見込み
- 譲渡後に同じ事業を行う予定があるか(21条の既定との関係)
買主が確かめること
- 売主の承認の手続が済んでいるか、議事録の写しを受け取れるか
- 商号や屋号を続けて使うか、使うなら22条2項の手当てをするか
- 売主に残る債務と、売主の支払能力
- 債権者を害する意図がなかったことを示す資料
- 売主の競業禁止の範囲が、買った事業を守るのに足りるか
どちらの側でも、確かめた結果を契約書の条項(前提条件、表明保証、補償)に落とし込みます。
手続を契約書に落とし込む:前提条件と表明保証の置き方
ここまでの会社法の手続は、契約書の中で、次のような形で扱います。法定の手続を「売主の義務」として書くだけでなく、手続が終わったことを、買主が確認できる形にすることがポイントです。
書き方の例(一般的な例) 会社法の手続に関する条項
株主総会の承認
理由「必要な社内手続」では、何が必要で、いつまでに終わるのかが読み取れない。条文を特定し、期限と、証明する書類を書く。
反対株主への通知
理由通知の期限を過ぎると、効力発生日を延ばすことになる。期限と、売主の義務を明記する。
承認が得られなかった場合
理由協議だけでは、買主は待たされるだけになる。解除と返還を書いておく。
売主の表明
理由手続の完了だけでなく、買取請求の影響を表明の対象にしておくと、売主の資金が不足するリスクに備えやすい。
確認の問いと理由売主と買主が、契約の前に確認しておきたい問い
売主は株式会社か、持分会社か。
株式会社なら467条の判断が必要です。持分会社は、定款の定めと社員の同意が出発点になります。
譲る事業は、総資産額の5分の1を超えるか。
超えれば、事業の重要な一部の譲渡として、株主総会の承認が必要です。算定は法務省令の方法によります。
株主は何人で、全員が賛成しているか。
全員が賛成していれば、手続は簡単になり、反対株主の買取請求の可能性も低くなります。全員の同意書を取る方法もあります。
譲渡後、買主は売主の商号を使うか。
使うなら、22条2項の登記または通知の手当てが必要です。使わないなら、使わない旨を契約に書いておきます。
売主は、譲渡後に同じ事業を続けたいか。
続けたいなら、21条の既定を外す特約が必要です。続けないなら、期間・地域・業務範囲を決めて書きます。
売主に残る債務は、譲渡後も払い続けられるか。
払えないおそれがあると、23条の2により、買主が追及を受けるおそれがあります。買主は、売主の資力を確認します。
起きがちなこと
会社法の手続で起きがちなこと
- 小さな店舗だから承認は要らないと決めつけたが、総資産額を法務省令の算式で計算すると、5分の1を超えていた。
- 決算書の総資産額をそのまま使って、5分の1を超えないと判断した。
- 株主総会の承認を、効力発生日の当日か、その後に取ろうとした。条文は「効力発生日の前日まで」である。
- 反対株主への通知を、効力発生日の直前に行い、20日前の期限に間に合わなかった。
- 売主の会社が持分会社で、467条の手続が当てはまると考えて、定款の定めを確認しなかった。
- 買主が売主の商号を引き続き使用しながら、22条2項の登記も通知もせず、取引先から売主の債務の請求を受けた。
- 競業について何も書かなかったため、売主が譲渡後に近くで同じ商売を始められないことを知らず、争いになった。反対に、買主が売主の競業を望んだが、期間と範囲を書かず、実質的に守れなかった。
- 売主の負債だけを残して事業を移し、債権者から買主に請求が来た。買主は善意だったことを示す資料を残していなかった。
よくあるご質問
事業譲渡をするときは、必ず株主総会の承認が必要ですか?
必ずではありません。事業の全部の譲渡や、事業の重要な一部の譲渡には承認が必要ですが(会社法467条1項)、譲り渡す資産の帳簿価額が総資産額(法務省令の算定方法による)の5分の1以下であれば、事業の重要な一部の譲渡には当たりません。また、相手方が売主の特別支配会社である場合は、承認は不要です(468条1項)。取締役会設置会社では、別に取締役会の決議が必要になることがあります。
反対株主の買取請求は、いつまでにしなければなりませんか?
効力発生日の20日前の日から、効力発生日の前日までの間に、買い取らせる株式の数を明らかにして請求します(会社法469条5項)。売主の会社は、効力発生日の20日前までに、株主に事業譲渡をする旨を通知しなければなりません(同条3項)。公開会社である場合や、総会の決議で承認を受けた場合は、公告で通知に代えることができます(同条4項)。
株式を売ったあと、同じ事業を始めてはいけませんか?
株式を売っただけでは、事業を譲渡した会社に課される会社法21条の競業禁止は働きません。売主が近くで同じ事業を始めるのを止めるには、契約書に期間・地域・業務範囲を書いて競業避止の条項を置きます。事業譲渡の場合の既定は会社法の事業譲渡の手続のページで、条項の書き方は競業避止と引継ぎ協力のページで扱っています。
買主が売主の屋号をそのまま使うと、何が問題になりますか?
買主が売主の商号を引き続き使用する場合、買主も売主の事業によって生じた債務を弁済する責任を負います(会社法22条1項)。事業を譲り受けた後に遅滞なく、債務を弁済する責任を負わない旨を登記するか、買主と売主から第三者に通知した場合は、責任を負いません(同条2項)。使うなら、この手当てを前提に契約書を書きます。
売主が負債を残して事業を売った場合、買主は責任を問われますか?
売主が、買主に引き継がれない債務の債権者を害することを知って事業を譲渡し、買主も害することを知っていたときは、債権者は、買主が承継した財産の価額を限度に、買主に債務の履行を請求できます(会社法23条の2)。買主が効力発生時に知らなかったときは請求できません。善意であったことを示せる資料を残しておくと、備えになります。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、譲渡の対象、会社の形態、定款の定め、取引先との契約の内容によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や取引を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 中小企業庁 / 個人情報保護委員会 / 法務省